インダストリアル・エンジニアリング(IE)とは?概要や定義、手法、メリットなど徹底解説

業務改善を行う技術のひとつであるインダストリアル・エンジニアリング(IE)。特に製造業界においては、現場のコスト削減や生産性をあげるのに有効な手法であり、常に全体の最適化を目指し繰り返し行っている活動でもあります。
本コラムでは、インダストリアル・エンジニアリング(IE)の概要や手法、メリットなどを紹介します。

このコラムを読んで分かること

  • インダストリアル・エンジニアリングの概要
  • インダストリアル・エンジニアリングの代表的な手法「方法研究」と「作業測定」
  • インダストリアル・エンジニアリングを行う主な3つのメリット

【目次】

  • インダストリアル・エンジニアリングの概要
  • インダストリアル・エンジニアリングの代表的な手法
  • インダストリアル・エンジニアリングの3つのメリット
  • インダストリアル・エンジニアリング手法を使う際に注意するポイント
  • インダストリアル・エンジニアリングを活用した企業事例
  • まとめ

インダストリアル・エンジニアリングの概要

初めに、インダストリアル・エンジニアリング(Industrial Engineering:IE)とは何なのか、その概要を解説します。

インダストリアル・エンジニアリングは、業務改善を行う技術のひとつであり、製造における作業工程、作業内容を科学的に分析する手法でもあります。

人やモノ、設備だけでなく、情報(データ)など総合されたシステムの設計・改善・確立に関するものがインダストリアル・エンジニアリングであり、企業における価値とムダを顕在化し、価値を最大限に引き出すための技術であるともいえます。

略してIE(アイイー)とも呼ばれるインダストリアル・エンジニアリングは、1910年代にアメリカの技術者兼経営学者のフレデリック・テーラーによって提唱されました。日本に伝わったのは戦後と言われており、現在では大手自動車メーカーをはじめ、様々な企業の製造現場で活用されているだけでなく、物流・農水産業・サービス業などでの活用もみられます。

インダストリアル・エンジニアリングを活用する目的

インダストリアル・エンジニアリングを活用する最大の目的は、企業としての最適化です。製造現場(生産管理)に限らず、企業全体それぞれの現場で3つのM(ムリ・ムダ・ムラ)を洗い出し、工程や作業、仕組みやルールの改善を目指すことで、生産性と収益の向上が期待できます。
工場などの生産現場を対象としている印象が強いインダストリアル・エンジニアリングですが、事務作業にも適用できます。

インダストリアル・エンジニアリングには資格がある

インダストリアル・エンジニアリングは、「インダストリアルエンジニア」という認定資格が制定されています。
資格を取得するためには、一般社団法人日本能率協会が行う「生産革新プロフェッショナルコース」の単位取得が必要です。約3か月間、受講スケージュールに沿ってインダストリアル・エンジニアリングに関する知識や、ものづくりに関する知識や技術を学びます。最終的にIE士認定試験(筆記試験)、個人面談評価(レポート内容、発表、質疑応答)など、いくつかの認定条件を総合的に評価され認定されます。

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インダストリアル・エンジニアリングの代表的な手法

さて、インダストリアル・エンジニアリングには様々な手法がありますが、中でも代表的なのが「方法研究」と「作業測定」です。ここではこの代表的な2つの手法について詳しく解説していきます。

1.方法研究

方法研究とは、作業・工程・動作を分析してより良い方法を探し出すための手法です。それぞれ細分化し分析することで、「なぜ、この作業が必要なのか?」「なぜ、この動作が必要なのか」と疑問を持つことがスタートになります。そして、そうした疑問を掘り下げることで3つのM(ムリ・ムダ・ムラ)を早く発見し改善に繋げることができます。

方法研究の具体的な実施方法には、以下の3つの分析があります。

(1)材料から製品化までの流れを分析・改善する「工程分析」

工程分析では、材料から製品化までを「加工」「運搬」「検査」「停滞」の4つに分けて分析します。記号を使い、それぞれの過程を図に表すことで現状や工程全体が明確になり、問題点や課題が表面化しやすくなります。結果として、工程の流れの中に潜むムダや余剰検査などを把握、改善することができます。

(2) 作業者が実施するすべての動作を分析し、最適な動作を追求する「動作分析」

動作分析では、作業者の動作内容を細かく分析することで無駄な動作をなくし、より効率的で疲れない動作方法・作業順序を追求します。
「動作」は、作業者の手の動きだけでなく、目の動き、移動するときの姿勢・距離だけでなく、作業をする際の思考時間も細かく分析します。
分析した結果、改善時間がたった数秒というものもあるかもしれません。しかし、生産数が多い製品の生産時には、大きな改善となるでしょう。

(3)材料や製品などの扱い方や搬送などを分析する「運搬分析(マテハン分析)」

運搬分析(マテハン分析)では、材料の入庫から製品として出荷されるまでのすべての工程における、材料や製品の扱い方や搬送などを対象に分析します。
材料の一次保管から始まり、工程間搬送、包装工程への搬送など、材料や製品は常に移動しています。こうしたモノの移動時間、移動距離、移動回数、移動経路、移動方法の中で発生しているムダを発見して、搬送作業を改善します。

2.作業測定

作業測定とは、それぞれの工程における作業時間を測定・分析する手法です。
作業時間や作業方法を客観的に数値化することで、作業に必要な標準時間の目安を立てることができます。また、実際の作業時間を測定し、標準時間と比較することでムダな作業を顕在化し、改善します。

作業測定の具体的な実施方法には、以下の2つの分析があります。

(1)作業に要する時間を測る「時間分析」

時間分析とは、ある作業を要素や単位といったレベルで細かく分けて、それらの時間を観測・記録して分析します。この際の手法には、「ストップウォッチ法」と「PTS法」の2種類があります。
ストップウォッチ法は、各動作にどのくらいの時間がかかっているのかを、実際に現場で動作をみながらストップウォッチで計測する基礎的な手法です。一方PTS法は、各基本動作に対し標準時間を決め、その組合せにより標準時間を設定するもので、工程が完成する前に工程の能力を見積もる場合に用いることが多い手法です。

(2)稼働率の比率を調査する「稼働分析」

稼働分析は、作業者や設備がどのような要素にどれくらいの時間を使っているかを把握することで、稼働状態を分析する方法です。
まず、休憩や計画停止を省いた実操業時間のうち、稼働している時間と稼働していない時間を明確にします。そして、稼働していない時間、例えば前工程からの待ち時間や、材料供給による稼働停止といった要因のうち大きな割合を占めるものに改善策を講じ、稼働率アップを図ります。

さて、ここで覚えておきたいポイントです。
「方法研究」と「作業測定」それぞれを単独で行うものというよりは、お互いを補完しあい活用していくものと考えましょう。

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インダストリアル・エンジニアリングの3つのメリット

製造業におけるインダストリアル・エンジニアリングには、様々なメリットがあります。ここでは主なメリットを3つご紹介します。

1.無駄な業務を発見できる

インダストリアル・エンジニアリングは、製造現場に限らず、企業全体それぞれの作業・工程・動作をあらゆる角度から分析することで、客観的な視点から無駄な業務を発見できます。
無駄になっていた原因を突き止めることで合理的な対策の実行が可能になり、生産性と収益の向上が期待できます。

2.記号化・図表化で客観視できる

インダストリアル・エンジニアリングは、定量化した情報を「記号化」「図表化」することにより、無駄をわかりやすくするだけでなく、どのような流れや手順・期間で作業が行われているか、また各工程や作業との相互関係なども確認することができます。
記号化・図表化は、定量的な情報を見やすくするだけでなく、煩雑なデータ整理にも便利です。複数名またはチームで効率化を目指す場合や、企業内で成果を共有する場合にも有効な手段と言えるでしょう。

3.業務を見える化して現状把握できる

インダストリアル・エンジニアリングの様々な分析によって、無駄を洗い出し、その無駄を記号や図表、数値、グラフで表すことで、効率的に現状把握、現状分析が可能になります。また、現状が“見える化”することで、問題点や課題が明確になりその難易度に応じた効果的な対策を立案することも可能です。
特に、工程が複雑であったり細分化されていたり、また各作業と相互関係がある製造現場にとって、現状把握は無駄を洗い出す際に最初に行う重要な作業であり、企業の成長を左右するカギでもあります。

インダストリアル・エンジニアリング手法を使う際に注意するポイント

ここからは、インダストリアル・エンジニアリング手法を用いて工程を分析・改善する場合に注意すべきポイントを2つ紹介します。

まず1つ目は分析を客観的に行うこと、2つ目は分析を定量的に行うことです。
分析によって得られる結果は、誰が行っても、同じ結果でなければなりません。客観的に分析するためには、誰もが同じ手順で作業すること、揺らぎのない数値データの収集、定量的な作業の指示が必要です。また、事実をありのまま分析しましょう。分析をしている最中にいつもと異なる手順や動作を加えてしまっては、本来のデータを取ることができません。
収集したデータは、誰が見てもわかるように記号化、グラフ化、図表化することも大切です。

インダストリアル・エンジニアリング手法の活用は、こうしたポイントを押さえた上で行いましょう。

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インダストリアル・エンジニアリング(IE)を活用した企業事例

最後に、2つの企業の取組を例に、インダストリアル・エンジニアリングの活用方法を見てみましょう。

電機メーカー

老舗電機メーカーで用いられているインダストリアル・エンジニアリング(IE)は、長年の知見とノウハウを活かした現場の最適化オペレーションです。
現場の作業エリアにおける各作業者の行動、動作を撮影・データ化し、可視化することで作業ごとの標準値を尺度として設定。実作業との差異の原因を突き止め、改善を繰り返し実行しました。こうして持続的に現場改善の最適化を行い、経営への貢献を目指しています。

そのほか、外的要因によって作業変動が生じやすい物流、流通にもIEを導入しています。結果、物流業務にIEを取り入れて持続的なプロセス改善を行ったことで、ピッキング工数を25%向上、作業コストを約11%削減、そして分析にかかる工数を40分の1へと削減することができたとされています。

飲食サービス企業

イタリア料理を展開する飲食サービス企業では、外食産業の生産性が低いと言われる業界のイメージを払拭すべく、国際競争力のあるメーカー並みの生産性水準の達成を目指していました。
そこで着手したのが、インダストリアル・エンジニアリング(IE)に基づいた取組です。接客・調理など、すべての工程にかかる動作を撮影し、秒刻みに作業を分解。これまでの事例や固定観念にとらわれることなく、無駄を発見・改善するように努めました。
結果、厨房面積の半減、作業効率化に繋がり、客席の増加や、土地狭小な都市部でも小規模店舗を設置することができました。

まとめ

今回は、インダストリアル・エンジニアリング(IE)の概要や手法、メリットなどについてお伝えしてきました。
本コラムの内容を改めてまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • インダストリアル・エンジニアリング(IE)は、業務改善を行う技術のひとつであり、工程、作業内容を科学的に分析する手法
  • 活用の目的は企業の最適化であり、現場の3つのM(ムリ・ムダ・ムラ)を顕著にして改善を目指すことで、生産性ならびに収益の向上を目指すこと
  • インダストリアル・エンジニアリングには方法研究と作業測定という代表的な2つの手法がある
  • 方法研究と作業測定を組み合わせることによって、最適化への大きな効果が発揮されやすくなる

生産性を向上させ、業務改善を行うには、インダストリアル・エンジニアリングの考え方とIT、生産管理システムとを掛け合わせることで、全体最適を目指しましょう。

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