【事例付き】BPOとは?対象業務やメリットとデメリットも解説
人手不足や最低賃金引き上げなどの理由から人件費が増加していることに加えて、原材料の高騰などにより製造原価が上昇するなど、ビジネスを取り巻く環境は厳しくなっています。
人件費やコスト増加などの課題を解決できる仕組みとして、いま「BPO」が注目を集めていることをご存知でしょうか。
BPOは経理や総務などの業務プロセスを一括して委託する仕組みのことです。今までノンコア業務に割かれていたリソースをコア業務に集中できたり、委託した業務を見直し、改善したりすることで生産性を高めてくれるメリットがあります。
本コラムではBPOの概要やメリット、デメリットをご説明します。
BPOを導入して業務効率化に成功した事例も併せて紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
このコラムを読んで分かること
- BPOとはなにか、BPOとBPR、アウトソーシングの違い
- BPO導入で得られる3つのメリットと注意点
- BPOを導入した企業の成功事例
【目次】
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは
- BPOのメリット
- BPOのデメリット
- BPOで生産性向上した成功事例
- まとめ
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは
BPOとは、経理や総務、営業などの業務プロセスを、一括して外部の専門業者に委託することです。BPOの特長としては、委託対象となる業務範囲が広く、例えて言うならば部門の機能を丸ごと外部に置くようなイメージです。
そのため、委託する業務の企画や設計、課題分析から改善案を策定し効率化を図るというプロセスも委託範囲になります。
例えば、商品開発を得意とするものの営業ノウハウがないために苦戦している会社であれば、営業業務を専門にするBPO会社に依頼することで弱点を克服し、今まで営業活動にとられていたリソースを商品開発へ集中できることになります。
つまり、効率化や人材確保という視点だけではなく、経営戦略のひとつとしてBPOを導入する企業が増えているのです。
ここではBPOの対象となる業務や、類似するアウトソーシングやBPRとの違いについて説明します。
BPOの対象業務
BPOの対象となる業務は、データ入力や給与計算、ヘルプデスクなどのようなマニュアル性の高いノンコア業務が中心になります。最近では事務業務のほか、マーケティング領域や採用代行、人材育成、健康管理、物流まで、幅広い業務も対象となっています。
BPOとアウトソーシング、BPRの違い
BPOと類似する用語に、「アウトソーシング」と「BPR」があります。
アウトソーシングとは、人手不足の解消などを目的に、業務の一部分だけを切り出して依頼する手法です。そのため、BPOとは委託する業務範囲が異なる点が、大きな違いといえるでしょう。ただし、言葉の通り、BPOもアウトソーシングの一種であるといえます。
もう1つの類似する言葉に「BPR」があります。BPRとは「Business Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の略称で、既存業務やビジネスプロセスの非効率な過程を抜本的に見直し、再構築を行うことを目的とした取組です。
BPOが業務の改善や効率化を目的とした取組であるのに対し、BPRはさらに業務改革までを視野に入れた取組である点が異なります。
BPOのメリット
BPOを導入すると、メインの業務に集中できるだけでなく、コスト削減や品質向上などのメリットがあります。ここでは、BPOのメリットを3つご紹介します。
(1)コア業務に集中できる
BPOを導入するメリットの1つは、直接利益には繋がらないノンコア業務に割り当てられていた人材・時間を、利益に直結するコア業務に集中できることです。
企業の業務の中には、直接収益につながらないが、企業を運営していく上では必要な業務があります。そのような業務にBPOを導入することによって、利益に直結する本業に人材や時間を集中させることができます。その結果、企業の収益向上が期待できるでしょう。
(2)人件費を削減できる
BPOを導入することで人件費の削減も期待できます。
企業では、繁忙期に合わせて一定の人材を確保している場合があります。そうなると閑散期には、人が余り無駄なコスト=固定費がかかってしまいます。
しかし、BPOを利用すれば変動費になるため、経営リソースを柔軟に見直すことが可能です。
また、必要なスキルをもつ人材が既に揃っているBPOであれば、新たに必要なスキルを持つ人材を確保するよりも、安価に安心して依頼することが可能です。
(3)業務を効率化でき品質を向上できる
BPOには業務を効率化して生産性を向上させるメリットもあります。
BPOを受託する業者は、事務や経理などのそれぞれの業務ノウハウを持った専門業者です。委託した業務に無駄があれば改善も図ってくれるため効率化が期待でき、結果として品質の向上につながります。
BPOのデメリット
企業の成長につながるBPOですが、デメリットもあります。ここからはBPOのデメリットについて2つご紹介します。
情報漏えいの危険がある
経理や人事に関する業務を委託する場合、個人情報や機密情報を提供することも考えられます。そのため、委託先での流出や紛失などのトラブル、ウイルス攻撃によって情報漏えいが起きるリスクがあります。
BPOサービスの業者を検討する際には、個人情報の扱いが適切であると評価された「プライバシーマーク」を取得しているか、国際的なセキュリティー基準をクリアしていることを示す「ISMS認証」を取得しているかなどを確認しましょう。そして、BPO業者とは事前に情報管理の方法や、情報が漏えいしてしまった場合の対策についても確認しておきましょう。
ノウハウの蓄積が難しい
BPOは業務全体を委託するため、社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットがあります。
仮に業務を自社に戻すとなった場合、部門の設立や人材育成など必要以上に労力を費やすことになるでしょう。
BPO業者とは定例会を行ったり、日頃からコミュニケーションをとったりして、社内にノウハウが全く蓄積されない状態に陥らない対応が必要です。
BPOで生産性を上げた成功事例
ここからは、実際にBPO導入で生産性が向上した成功事例を2つご紹介します。
「業務量の増加」と「繁閑の差」をBPOで解消したOA機器業界A社
OA機器業界A社では、取り扱う商品の種類やサービスが増えるにつれて業務が複雑化。業務量も増えてしまったことや、契約更新時期が重なる繁忙期と閑散期の業務量の差が激しいことが課題でした。そこで、業務の効率化や繁閑差に対応するためにBPO導入に踏み切りました。
BPO業者はまず、業務量をどのように予測し人員をどう配置していくかという課題に取り掛かりました。
業務量の予測については、A社に契約件数を予想してもらい、その計画値をもとにスタッフの増員タイミングを検討しました。また、閑散期の差については、短期間でも覚えられる業務を切り出すことを行いました。繁忙期になった際、新たに入ってきた未経験スタッフでも対応できる業務を用意した、ということです。
また、1日の中でも時間帯によって処理する業務の違いがある点に注目し、処理する業務内容に特化したパートスタッフを配置。午前に処理する業務と、午後からの業務で別の専門スタッフを配置することで時間帯に応じた人数調整も行い、繁閑の差に対応できるようになったのです。
BPO導入から2年後、OA機器のモデルチェンジや契約更新が重なり業務が数倍に拡大してしまった際には、複雑な契約更新業務の効率化を、BPO業者と一緒に進めました。
そこで行ったことは、業務の優先順位や納期を見える化するための「進捗管理システム」の導入です。A社とBPO業者が共同で管理・運用できるように対応しました。
その結果、処理件数を常に可視化できるようになり、人員配置の効率化だけでなく、複雑な契約処理業務の効率化にも繋がりました。
コア業務とノンコア業務の仕分けや効率化を実現した医薬品業界B社
医薬品業界B社では、経費処理にBPOを導入しました。
B社がBPOを導入した背景は、経理業務を担当していた派遣スタッフの業務の属人化と、形式も異なる大量の伝票処理の効率化でした。
派遣スタッフごとに異なる経費処理をしている姿と、形式がバラバラでかつ大量の請求書や領収書を見た当時の経理部門長は、業務の継続性に不安を抱いたそうです。スタッフの入れ替わりがあった際、新しく入った方に仕事を覚えてもらえるのか、派遣スタッフを管理する社員にとっては悩みの種でした。
そこで、BPO導入を検討したB社。いきなり業務委託すると混乱が生じる可能性があると考え、まず派遣スタッフとしてBPOスタッフを迎え入れました。直接B社から指導してもらいながら、業務プロセスの改善も同時に対応。BPOを導入したことで、業務プロセスの見える化とシンプルにすることを実現しました。
経理処理業務のBPO導入から始まったB社ですが、今では3つのノンコア業務にBPOを導入しています。自社にはないノウハウを使い、新たな目線で業務改善の提案をしてもらえる点を、メリットと感じているようです。
まとめ
今回は、BPOの概要やメリット、デメリット、成功事例などをご紹介しました。
本コラムの内容を改めて以下にまとめます。
<このコラムのPOINT>
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、部門や部署単位の業務プロセスを一括して専門業者に委託すること
- ノンコア業務を委託することで、メイン業務に注力できる点や、品質向上が期待できる
- 情報漏洩の危険や、自社にノウハウが蓄積されないなどのデメリットもあるが、成功事例も多い
自社のリソースをコア事業に注力する環境を整えるためにも、BPOは有効です。
先行きが不透明なVUCA(ブーカ)時代と言われる今、生産性UPや効率化も支援してくれるBPOに、注目してはいかがでしょうか。
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