入金消込とは? 業務効率化で労働時間を削減しよう

企業の経理業務において、入金消込は欠かせない業務の1つです。本記事では入金消込の概要、入金消込の際によく発生する問題や背景、入金消込業務を効率化するメリットや多様なツールについて、網羅的に解説します。

入金消込とは?

経理業務の1つである入金消込は、企業の口座情報などに入金を受けた際の内容をもとに「売掛金の勘定科目に計上された金額が入金されているかを確認し、入金されていれば売掛金の回収仕訳を計上して、売掛金の残高を正確に把握する業務」を指します。

主に現金やキャッシュレス決済が中心の飲食店や小売店といった業態よりも、卸売業など掛取引が中心の業態において深く関わる業務です。

売掛金がしっかり回収できているかをチェックし、もし回収できていなければ入金を促します。企業を存続させるために必要不可欠な資金繰りを安定的に進めるには、入金消込業務が欠かせません。

入金消込は発生ベースでの売上計上が前提

売上から売掛金回収までの流れを仕訳で表します。

▼売上の計上時(商品の納品時やサービス提供完了時)の仕訳

売掛金 10,000 売上高 10,000

▼入金消込時の仕訳

普通預金 10,000 売掛金 10,000

入金消込が意味をもつのは、上記の仕訳のように“発生ベースでの売上計上”が前提です。

特に中小企業は、入金ベースで売上を計上している場合があります。入金ベースでの売上計上は業績を正確に把握できないばかりか、未回収の売掛金も把握できないため、入金消込業務が意味を成しません。

入金消込の基本的な方法

入金消込業務では「売掛金」という勘定科目単位にとどまらず、販売先の顧客ごとに売掛金を管理する必要があります。会計ソフトによっては「補助科目」や「取引先」などの名称で管理されている企業も多いでしょう。売掛金を企業ごとに管理することで、どの顧客の売掛金が未回収なのか把握しやすくなります。

なかには顧客名勘定、つまり売掛先のある顧客を勘定科目として会計ソフトで作成・管理する方法もありますが、顧客が増えれば勘定科目も増えて管理が煩雑になりがちですので、補助科目機能を活用しましょう。

“手動”による入金消込

入金消込の原始的な方法は、自社口座の取引履歴を確認しながら仕訳を計上する方法です。経理業務では、口座の入出金履歴を計上して口座残高と帳簿上残高を確認することが基本的な業務の一つです。

このプロセスにおいて入金消込も同時に進めていく、いわば手動での入金消込方法といえます。以前は、銀行通帳をコピーしたり、ネットバンキングの取引履歴をダウンロードして印刷したりと、目視で確認しながら会計ソフトに入力していました。

手動消込では目視で消し込むため、口座履歴を1行ごとに慎重に確認しながら行います。一見、消し込みのミスが起こりにくいとも思えますが、取引先が多いほどに単調作業の繰り返しからミスが増えやすくなるリスクもあります。

“自動”による入金消込

現在は会計ソフトが銀行情報を自動で取り込み、口座情報の摘要をもとに入金消込の対象となる売掛金を自動で予測可能です。こうした機能を持つサービスやソフトを活用して自動での入金消込を行なえば、業務効率化につながります。

会計ソフトなどによる自動消込では、口座履歴の摘要をもとにどの企業からの入金か自動で判定するため、自動で取り込まれた銀行口座の摘要と自動判定された売掛先を見比べながら、消し込みを進めていくことが可能です。

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入金消込でよく発生する問題と原因

入金消込業務を進めるなかで起こりやすいいくつかの問題と、その原因について解説します。

入金消込の相手を誤る

「A社から入金されたのに、B社の入金と登録してしまった…」入金消込の相手を間違うことは、入金消込業務の代表的な誤りといえます。ただし、手動消込と自動消込の場合により主な原因が異なることが特徴です。

手動消込の場合

口座の入金履歴の読み間違いなど、ヒューマンエラーが大半の理由です。特に取引者数が多い企業はシステム内に登録された相手先も多く、なかには名称が似通っている企業もあります。その結果、本来登録すべき相手とは別の相手先を登録してしまうといったミスが発生しがちです。

自動消込の場合

自動消込は、システムが口座の摘要と登録された相手先の名称を照合して消込を行います。新規取引先の自動消込を実施する際に、データがまだ少ないために推測で似たような名称の企業で登録が行われることがあります。

こうしたケースはそれなりの頻度で発生するものの、取引先ごとに売掛金の残高を確認すれば金額がマッチしていない相手先を確認できるため、修正が容易です。

入金と対応する売掛金が確認できない

取引先から入金があった際に、その取引先の社名がシステムに登録されていない場合もあります。その原因は、以下のようなものが考えられます。

▼請求書を発行した担当者から入金消込をしている担当者に情報が共有されていないため、売上高の計上が漏れていた。

▼取引先が社名変更や合併などで社名が変わったが、システムでの変更が漏れていた。

請求情報が入金消込の担当者に共有されていないということは、そもそも入金消込業務以前に、売上の数字が正しく計上されていない可能性が高いでしょう。

また、社名変更はインターネットなどで確認可能で、普段やり取りしている担当者は先方から変更の連絡を受けている可能性があります。

いずれも“情報共有の不足”から問題が発生します。対応策としては、統一のシステムによる請求書発行、取引先の名称変更の情報について変更フローをルール化するといった対処法が考えられます。

振込手数料の差し引き

取引先の業種や企業によって、売掛金を入金する際に金融機関の手数料を控除する場合があります。

結果的には販売側が相手先の支払手数料を負担することになりますが、この場合に入金額の情報だけで消込を行おうとすると、振込手数料分の売掛金が残ってしまいます。取引先ごとに手数料の有無をチェックできる機能があるシステムもありますが、目視で済まそうとすることもあるでしょう。

また、インボイス制度に登録している場合は、引かれた手数料の処理を値引き扱いにする処理が必要になる場合もあります。入金消込の際にはさまざまなルールを確認のうえ、引かれた手数料を処理する勘定科目に気をつけることが必要です。

入金消込を効率化するメリット

入金消込の自動化による最大のメリットは、やはり業務時間の効率化と正確性の向上です。人力で業務時間の短縮を図った場合、正確性が損なわれるリスクがどうしても伴います。

その点、システムを導入したうえで運用ルールを定め、必要な情報を正しく登録すれば、入金消込上のトラブルは大きく減少するでしょう。

入金消込の正確性を向上させるとともに、業務時間を削減できた分は、例えば未回収となっている売掛金の確認や入金が遅れている取引先への連絡に充てるなど、資金管理の改善に注力することも可能です。

入金消込は単なる作業ではなく、入金情報を通じた適切な資金管理が最終目的です。入金消込の効率化により、まさに本来の目的を達成するための時間を確保できます。

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入金消込を効率化する方法

入金消込を効率化する方法は販売管理や会計ソフトなどのシステムをはじめ、Excelや決済代行(請求代行)サービスの導入も考えられます。

Excel(関数・マクロの活用)

多くの企業にMicrosoft Officeが導入されていることから、Excelの関数やマクロを活用した入金消込を行う会社は少なくないと考えられます。関数による一部作業の自動化、マクロ機能による一括チェックなど、業務効率化に役立てる一つのツールといえるでしょう。

一方で、業務効率化に有効な関数・マクロの活用には相応のスキルが求められます。また、必要なデータやマクロは適宜更新が必要です。誰もが発展的なExcelスキルを持ち合わせているわけではなく、スキルのある方に業務が集中すれば属人化を招き、業務効率化も進まなくなってしまいます。

決済代行(請求代行)サービス

請求~代金回収までの作業を代行する決済代行サービスは、請求金額の支払いが代行サービス会社となっているため、入金状況を確認する時間の削減につながります。さまざまな支払い方法を用意できる点も、取引先にとってメリットです。

また、サービスによって未回収となっている取引先への督促業務の代行や、入金のない代金を決裁代行サービス会社が代わりに支払う保証を担うなど、多様なサービス内容も見逃せません。

会計ソフト

入金消込機能が備わる会計ソフトは、会計データと連動した対応が可能です。消込に必要なデータを会計ソフトに入力する手間がかからず、取引先の売掛金をグラフで可視化するなど、管理のしやすさが魅力です。

オプション機能の場合は、現在の業務に即しているか事前に確認しましょう。

販売管理システムなど専用ソフト

入金消込や請求業務以外にも、在庫管理や納期管理など関連業務を含め一元化したい場合は、販売管理システムなど専用ソフトの導入もおすすめです。

特に多種多様な商品を扱う企業の場合、請求書発行と同時に在庫変動も一元的に管理できる機能が搭載されたシステムを投入することで、入金消込だけでなく棚卸作業なども効率化できます。

ZEDI(全銀EDIシステム)について

2018年12月に稼働したZEDI(※)。バックオフィス業務の負担軽減に役立つZEDI対応のソフトを利用することで、企業間で総合振込が行われる際に、支払側は支払通知番号や請求書番号、商流情報といったさまざまな情報を添付可能です。

また、受取側企業は総合振込に添付された請求データから入金消込作業を自動化でき、リアルタイムで取引内容を確認できるため、請求書と入金額の差額の原因を特定しやすくなります。

※ZEDI(全銀EDIシステム)とは:全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営する、 2018年12月に稼働したインターネットEDIに対応したシステムです。企業間の振込電文を国際標準のXML方式に移行することで、商取引に関するさまざまな情報を自由に設定できるようになりました。2021年時点で1,000超の金融機関がZEDIに対応。受発注・請求・決済データを連携することで、入金消込業務を含めたバックオフィス業務の効率化を実現します。

入金消込システム導入時のポイント

入金消込システムを導入する際には、既存の業務フローへの影響を考慮する必要があります。例えば、現在利用する会計ソフトと並行して新たなシステムを導入する際には、会計ソフトとの連携が可能か事前に確認しておきましょう。

また、入金消込を担当するスタッフへのトレーニングも重要です。もし、システム導入前まで手動で入金消込を行なっていた場合、システムの導入による入金消込業務の自動化は大きな転換点となります。

導入前まで長くアナログな形で入金消込を進めていれば、せっかくシステムを導入しても、これまでの業務の習慣から、目視や手動で消込を進めようとするかもしれません。こうした“二重作業”を防ぐためにも、入金消込業務の自動化による業務時間の削減によるメリットを理解してもらえるように、システム面の検証と並行して粘り強くトレーニングを重ねましょう。

まとめ

入金消込は経理業務において欠かせない作業であり、ひいては資金繰りの安定につながる重要な役割をもちます。入金消込に関わるさまざまなツールやサービスが展開されているなかでも、特にZEDIに対応したシステムの導入は入金消込を効率化する方法の一つとして検討の価値があります。現在の業務を棚卸ししながら、自社にとって最適なソリューションを選んでください。

著者プロフィール

渋田 貴正
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、証券アナリスト、上級相続診断士。

大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。

2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務 を行う。

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