経費削減で見直すべき3つのコストと経費削減の注意点
会社の規模が大きくなればなるほど把握しづらくなるのが、事業におけるコストとなる「経費」です。改めて精査してみると、業務内容を見直したり契約業者を変えたりすることでコストを下げられるということに気付くケースは少なからず存在します。
そこで今回は、経費削減によって会社の収益改善に貢献したいという経理担当者のために、注目すべき3つのコストや経費削減における注意点などを解説していきます。
経費削減を行うことによる会社としてのメリット
経費削減のメリットとして第一に挙げられるのが、「収益を上げる」ということです。
例えばスーパーの場合、陳列されている商品を消費者に買ってもらうことで売上を得ます。しかし、当然の話ですが商品の売上がそのままスーパーの収益になるわけではありません。商品の仕入れや従業員の給与、店舗の光熱費などさまざまな「出ていくお金」がかかっているからです。
売上から必要経費などを差し引いて残ったものが、純粋な収益となるため、どんなに売上が多くても、出ていくお金が多ければ多いほど収益は下がります。
また、売上が同じであっても、出ていくお金を減らせば収益性は高まります。100万円の売上に対し、必要経費が30万円のケースと60万円のケースでは、得られる収益はそれぞれ70万円と40万円です。
これはあくまで大まかな例ですが、必要経費を削減できたぶん、収益が増えることに変わりはありません。
このほかにも、経費削減は結果として従業員のモチベーションアップにも繋げることができます。経費削減によって増えた収益を、給与アップやボーナスとして従業員に還元することで従業員のやる気も高め、生産性や組織力の向上にも役立てるという企業も少なくありません。
さらに、収益を新規事業や事業拡大のための運転資金に回すこともでき、さらなる企業の発展も期待できます。
経費削減に取り組む際には、自社にとってどのようなメリットがあるかを先にはっきりとさせておくことが大切です。取り組む中で「何のために経費削減しているんだっけ?」と方向性を見失うような事態になりにくくなります。
経費削減で見直すべき3つのコスト
企業が経費削減を行う際にで見直したほうが良いコストは、主に3つあります。
印刷や消耗品などにかかる「オフィスコスト」、電力やガスなどの「エネルギーコスト」、業務改善による「オペレーションコスト」の3つです。
(1)オフィスコスト
「オフィスコスト」の削減は、実践するのが簡単で結果がすぐにあらわれるのが特徴です。
例えば、社内で使う資料を印刷する際には以下のようなルールを設けてみましょう。
・両面プリントや2ページ分を1ページに集約して印刷する設定を行う
・カラー印刷は必要最低限とし、モノクロ印刷とする
この2つを全社で徹底するだけで印刷用紙やインク・トナー代を節約でき、コスト削減効果を得られます。
ちなみに、使用済み用紙の裏に新しく印刷するという方法は、実は節約効果はそこまで高くありません。印刷用紙1枚当たりのコストよりコピー機を使用するコストのほうが高いため、用紙ではなく印刷回数を減らす工夫のほうが節約効果が高くなります。
このほかにも、運送や清掃などにかかわる業者の契約内容を見直したりするのも効果的です。
(2)エネルギーコスト
「エネルギーコスト」の削減は、年間で支出される金額も大きいため非常に重要なポイントです。水道やガス、電気は企業によっては毎日のように使用するものであり、日々節約することで大きな結果につながります。
その中でも特に注目したいのが、オフィスの照明です。企業にかかる電力コストのうち、「約40%」が照明に費やされていることが財団法人省エネルギーセンターの調査によって分かっています。
それを踏まえると、省エネのLED照明は従来の白熱電球などと比べて消費電力を大幅に抑えることができるため、導入コストはかかりますが長い目で考えると交換したほうがお得です。
また、電力契約そのものを見直すことも大切です。2016年の4月より、電力自由化が始まっています。大手電力会社以外の新電力会社が登場し、価格競争が起きたために基本料金の値下げや手厚いサービスなどが行われています。
その地域にどんな電力会社があるか、営業形態にマッチした契約プランがないかなどを調べ、料金を下げれる余地がないかを検討してみましょう。
(3)オペレーションコスト
「オペレーションコスト」は、主に物流費や人件費のことをいいます。従業員数が多い企業の場合、これらのコストが経費の多くを占めることも珍しくありません。
このコストを削減するには、業務内容を見直して不要な業務を減らしたり、テレワークなど新しい働き方を取り入れたりする必要があります。
人事総務やマネージャー層と協力し、企業内の各部署が行っている業務を可視化し、重複している業務や不要な業務などがあれば削減していきましょう。テレワークも、導入できればオフィスコストの削減や従業員に支払う交通費の削減に役立ちます。
ほかにも、早朝出勤やフレックス勤務なども導入することで、従業員の勤務環境の改善や残業代の削減などの効果が期待できます。長年の業務内容や勤務形態を改革するのは大変ですが、最近言われる「働き方改革」の一つとしても制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ITを活用したコスト削減
オペレーションコストを軽減するために業務を見直し効率化を図ることは、昨今話題の働き方改革で課題とされている「生産性の向上」にも繋がります。その手段としてITを活用したいと考えている企業も、多いのではないでしょうか。例えば、以下のような方法が考えられます。
・定型業務の効率化:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用による単純作業の自動化
・経費精算のシステム化:チェック機能の自動化、会計伝票作成と会計システム入力との二重作業の排除
・給与明細のペーパーレス化:紙による給与明細の配布をメールでの自動配信にすることで、事務作業を軽減
ITの活用を考える際には、まず改善すべき箇所や効率化すべきポイントを洗い出し、しっかりと見定めましょう。その後、適切なITツールを取り入れてください。そうすることで、決して安価ではないIT投資に見合う効果が生まれることでしょう。
経費削減でやってはいけないこと
ここまで、経費削減の良い面をご紹介してきましたが、経費削減はやり方を間違えると企業の信用低下や競争力の低下を招く場合もあり、結果として経費削減に取り組む前よりも売上が下がってしまうリスクがあります。
これでは本末転倒なので、経費削減の注意点をあらかじめ抑えておきましょう。
信用や競争力が下がってしまうのは、社員のモチベーションや商品などの品質が下がってしまうことが原因です。
例えば経費削減を追い求めるあまり、従業員にプレッシャーをかけ過ぎたり、職場環境の快適さを無視したりすると、従業員のやる気も下がりがちです。これでは本来の業務にも力が入らず、取引先や消費者からの信頼を失う可能性もあります。
さらに、人件費を削減しすぎた結果人手が足りなくなってしまったり、商品の素材に安価なものを使ったりすれば、おのずと商品やサービスの質も低下します。
経費削減は、本来収益アップのために行うものです。そのメリットを活かすためにも、従業員のモチベーションや商品の質を下げるような経費削減のやり方はしないように注意しましょう。
全社員で目的と目標を共有することが重要
企業にとって、経費削減は収益につながる重要なものです。ただし、いくら経理担当者が頑張っても一人で成功させられるものではありません。企業全体の収益アップという基本的な目的を達成するためにも、具体的なやり方や目標を全従業員で共有することが大切です。
また、「経費を削減することが目的ではない」ことを忘れないようにしましょう。
従業員のモチベーションや商品の品質などを下げるやり方ではなく、これまでの仕事のパフォーマンスを落とさずに経費を削減することが重要であるため、経費削減は全社一丸となって取り組むということが成功のポイントです。
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