グリーンITとは?概要や事例、企業として取り組む際のポイント

皆さんは、環境問題に対する活動の1つであるカーボンニュートラルなどとあわせて、「グリーンIT」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
グリーンITとは、情報技術(IT)を活用した環境負荷低減につながる取組のことです。地球温暖化などの環境問題が深刻化する今、環境の負荷を減らす取組であるグリーンITは、企業価値を高める方法のひとつでもあります。
本コラムではグリーンITの概要や取組事例などと併せて、企業がグリーンITを進めるためのポイントもご紹介します。

このコラムを読んで分かること

  • グリーンITの概要と取組が求められる理由
  • グリーンITの取組事例
  • 企業のグリーンITへの取り組み方

【目次】

  • グリーンITの概要
  • 省エネルギーに向けた世の中の動向
  • グリーンIT/IoTの活用事例
  • 企業がグリーンITを進めるためのポイント
  • まとめ

グリーンITの概要

まずはグリーンITとはどういったものなのか、求められる理由なども併せてご紹介します。

グリーンITとは

グリーンITとは、情報技術(IT)を活用した環境負荷低減につながる取組のことを指します。具体的には、「ITの省エネ化(情報システムそのものの環境負荷低減)」と「ITによる省エネ化(情報システムによる環境負荷低減)」の2つの側面があります。
「ITの省エネ化」は、サーバーやPCなどの低消費電力化や、消費電力を抑えた半導体製品の活用などが挙げられます。

【ITの省エネ化例】

  • IT機器やPC、ネットワークの消費電力の抑制
  • IT機器の冷却効率の向上
  • 仮想化技術、クラウド活用によるサーバーの削減

また、「ITによる省エネ化」は、IT技術を活用して業務・流通・機器・設備などを効率化することで環境負荷を低減させる取組です。例えば、照明のLED化や建物に設置したセンサーによる電力利用の最適化、テレワークなどが挙げられます。

【ITによる省エネ化例】

  • IT技術による電気機器、家電等の省エネ化
  • IT技術による産業用燃焼機器(高性能ボイラー等)の省エネ化
  • IoTやセンサー等によるオフィスビル、住宅の電力利用の最適化
  • AIやIoTを活用した物流システムによる輸送の省エネ化
  • IT、インターネットを利用した業務の効率化

こうした2つの側面を持つグリーンITによって、エネルギー消費の削減及び地球温暖化の防止が期待されています。

グリーンITが求められる理由

グリーンITが求められる理由は、地球温暖化対策です。
現在、地球温暖化は深刻な状況を迎えており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(2014年)によると、陸域と海上を合わせた世界の平均地上気温は、1880年から2012年の間に0.85℃上昇したことがわかっています。また、日本の平均気温を見ても、1898~2014年のおよそ100年あたり約1.15℃の割合で上昇していることがわかりました。
仮に、効果的な温暖化対策を講じなかった場合、20世紀末頃(1986年~2005年)と比較して21世紀末(2081年~2100年)の世界の平均気温は、2.6~4.8℃程度上昇すると予想されています。それだけではなく、平均海面水位は最大82cm上昇する恐れがあるとも予測されます。

気温の上昇は、海面上昇や、熱波、干ばつ、豪雨などの気候変動を誘発し、農畜産物・海産物への影響だけでなく生態系にも影響を及ぼす可能性があります。つまり、気温の上昇は、私たちの生活を脅かす大きな脅威になるのです。

地球温暖化の原因は温室効果ガスですが、その中でも、温暖化に大きな影響を及ぼしているものが二酸化炭素です。日本の電力の多くは「火力発電」によって供給されていますが、火力発電は多くの二酸化炭素を排出します。そのため、グリーンITによって省エネを進めることは、脱炭素社会を構築するひとつの手段であり、地球温暖化を食い止める一歩になるでしょう。

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省エネルギーに向けた世の中の動向

ITインフラに関わる機器などが多く生み出されたことで、消費電力も上昇し続けています。そこで世の中では、省エネルギーに向けた様々な取組を行っています。ここでは近年の省エネルギーに向けた動向を紹介します。

省電力設計のコンピューターへの取替

オフィスにおけるITの省エネ化として着手できる対策のひとつに、省電力設計のコンピューターへの取替があります。世界的な半導体素子メーカーが推測したデータによると、従来のプロセッサを搭載したデスクトップPCを液晶モニターで運用した場合の年間消費電力と、省電力設計のプロセッサを搭載するノートPCに置き換えるだけで、年間消費電力が約半分も削減できると言います。

省エネへの取り組みが伝わるベンチマークの設定

日本でも以前から、エネルギーの効率的な利用や使用の合理化を図るために「省エネ法」が制定されています。しかし、2008年頃から産業部門の一部の業界ではエネルギー消費効率が停滞期に入っていました。また、従来の目標値だけでは省エネに対する取組を適正に評価できていないという課題がありました。

そこで新たに、ベンチマーク制度を導入。事業者の省エネ状況を業種共通の指標を用いて評価し、事業者の省エネ取組状況を客観的に把握できるようにしました。省エネ状況に応じてクラス分けされ、最上位クラスの条件を満たした事業者は経済産業省のHPに公表されることで、優良企業であることをPRできるようになっています。

グリーンITイニシアティブPJ発足

2007年には経済産業省が「グリーンITイニシアティブ」というプロジェクトをスタートさせました。ITの技術革新、新技術の導入などによる省エネの実現を目指した構想であり、サーバーやルーターなどの機器の省エネ技術開発や、情報通信技術による環境貢献の見える化などを推進することが目的です。
2008年にはこの動きと連動し、電子情報技術産業協会(JEITA)など、7つのIT関連団体で「グリーンIT推進協議会」を設立。約5年にわたって、「ITの省エネ化」と「ITによる省エネ化」を国内外において普及促進し、各種調査事業などを実施してきました。2012年に協議会は解消したものの、協議会の一部事業をJEITAが引き継いでいます。

グリーンIT/IoTの取組事例

地球温暖化を食い止めるべく、世界中で脱炭素社会に向けた様々な取組を行っています。日本でもパリ協定をきっかけに、企業の財務に影響のある気候関連情報の開示(TCFD)、地球温暖化対策に向けた目標設定(SBT、RE100)などを通じて、脱炭素経営に取り組む動きが進んでいます。
脱炭素経営は、社会貢献につながるだけではなく、企業価値の向上につながることが期待できます。そうした脱炭素経営の一部として、グリーンIT/IoTに取り組む企業も出てきています。
ここでは、脱炭素や温室効果ガス排出削減に向けた企業のグリーンIT/IoTへの取組事例を紹介します。

建設会社

IT機器の運用負荷軽減やBCPの観点から利用が進む、データセンター。都市開発や建築工事をてがける企業では、利用者増によるデータセンターでのエネルギー消費量増大に対応するため、超高集積・高発熱サーバーに対応する液浸冷却システムを開発しました。
サーバーを丸ごと液体に浸して冷却するという、従来の空気による冷却方式(空冷方式)とは一線を画す装置です。空気の流れを考慮したラック配置が不要となったことで、省スペース化が可能となり、電力消費量も空冷方式と比較して大幅に低減できます。
今後は、排熱の温水利用など更なる環境配慮に向けた性能向上にも取り組まれるとのこと。DXの進展を最新の技術で支えています。

印刷会社

明治より印刷業を営むある企業では、オフセット印刷機の乾燥装置の光源に世界で初めてLEDを採用し、消費電力量の削減に努めました。また、工場の屋根に太陽光発電設備を設置。約20%の電力を賄い、残りの約80%の電力も風力発電による電力(カーボンオフセット済み)を購入することで、再生可能エネルギー100%印刷工場を実現しました。さらに、納品時の配送でも環境負荷低減を徹底しており、電気自動車やディーゼル車の使用、ダンボールの替わりにプラスチックコンテナで納品しています。
これら様々な取組の結果(2019年時点)、エネルギーコストの削減や、先進的な脱炭素経営への取組からメディアに取り上げられ、企業価値、問い合わせが高まったそうです。

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企業がグリーンITを進めるためのポイント

「ITの省エネ化」と「ITによる省エネ化」の2つの側面を持つグリーンITを企業が進めるためには、企業、従業員共に、省エネへの意識を持ち行動していかなければなりません。

まず個人レベルの取組としては、PCの電源管理を活用し消費電力を抑える、外出時や昼休み時にはPCを休止・スタンバイの状態にする、会議での資料はなるべく紙を廃止することなどが挙げられます。
また、企業としての取組としては、省エネ仕様のIT機器の導入や、サーバーの仮想化、リモートワークの導入などが挙げられます。
しかし、新たな機器の導入や設備の入れ替えは、膨大な費用がかかり懸念される企業も多いでしょう。そこで政府は、グリーン分野の導入を推進するため、補助金制度をいくつも設けています。ぜひそちらもあわせて検討されてはいかがでしょうか。

◆事業再構築補助金(グリーン成長枠)

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受け、経営に苦しむ企業に向けた新規事業への進出や業態転換、事業再編などに着手する中小企業の支援を目的にした補助金です。2020年度補正予算に盛り込まれたことからスタートし、第6回公募から新たにグリーン成長枠が設けられました。
グリーン成長枠の補助金対象になるのは、グリーン成長戦略・実行計画で挙がっている14分野(洋上風力・太陽光・地熱、半導体・情報通信、物流・人流・土木インフラなど)の課題解決につながる取組です。

  • 補助上限…中小企業:1億円、中堅企業:1.5億円
  • 補助率…中小企業:1/2、中堅企業:1/3

◆ものづくり補助金(グリーン枠・デジタル枠)

ものづくり補助金とは、中小企業が経営革新のための設備投資等に活用できる補助金のことです。
2022年からは「グリーン枠」や「デジタル枠」も創設され、グリーン化、デジタル化の助けになる製品・サービス開発または生産工程の改善に不可欠な設備投資等を支援してくれます。

  • 補助上限…グリーン成長枠:最大2,000万円、デジタル枠:最大1,250万円
  • 補助率…グリーン成長枠、デジタル枠共に2/3

◆事業再構築補助金(グリーン成長枠)

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受け、経営に苦しむ企業に向けた新規事業への進出や業態転換、事業再編などに着手する中小企業の支援を目的にした補助金です。2020年度補正予算に盛り込まれたことからスタートし、第6回公募から新たにグリーン成長枠が設けられました。
グリーン成長枠の補助金対象になるのは、グリーン成長戦略・実行計画で挙がっている14分野(洋上風力・太陽光・地熱、半導体・情報通信、物流・人流・土木インフラなど)の課題解決につながる取組です。

  • 補助上限…中小企業:1億円、中堅企業:1.5億円
  • 補助率…中小企業:1/2、中堅企業:1/3

◆ものづくり補助金(グリーン枠・デジタル枠)

ものづくり補助金とは、中小企業が経営革新のための設備投資等に活用できる補助金のことです。
2022年からは「グリーン枠」や「デジタル枠」も創設され、グリーン化、デジタル化の助けになる製品・サービス開発または生産工程の改善に不可欠な設備投資等を支援してくれます。

  • 補助上限…グリーン成長枠:最大2,000万円、デジタル枠:最大1,250万円
  • 補助率…グリーン成長枠、デジタル枠共に2/3

まとめ

今回は、グリーンITの概要や事例、企業として取り組む際のポイントについてお伝えしてきました。
本コラムの内容を改めて以下にまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • グリーンITとは、情報技術(IT)を活用した環境負荷低減につながる取組のこと
  • ITの省エネ化(情報システムそのものの環境負荷低減)」と「ITによる省エネ化(情報システムによる環境負荷低減)」の2つの側面を持っている
  • 企業がグリーンITを進めるためには、企業、従業員それぞれが省エネへの意識を持ち行動すること

企業がグリーンITに取り組むことは、社会貢献につながるほか、企業価値を高めるなどのメリットもあります。まず身近なところから、例えばすぐに取り組める社内での省エネ対策から始めてはいかがでしょうか。

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