夜間の人員配置基準の緩和による介護現場への影響とは?内容と注意点を徹底解説

公開:2024年11月06日

2024年度の介護報酬改定では、夜間の人員配置基準が緩和されました。本コラムでは2024年度の介護報酬改定を振り返りながら、改定夜勤職員配置加算の概要や算定要件について解説します。

また、夜間の人員配置基準の緩和が介護現場に及ぼす影響についても、現場の介護職目線で考察するので、ぜひご覧ください。

2024年度介護報酬改定の内容

2024年度に実施された介護報酬改定について、まずは以下5項目のポイントをわかりやすくご紹介します。

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応
  • 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  • 制度の安定性・持続可能性の確保
  • その他

参照:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

地域包括システムの深化・推進

新型コロナウイルスの流行による影響を踏まえ、医療機関の負担軽減や介護施設における感染症への対応力向上を主眼においています。

<主なポイント>

  • 公正中立で質の高いケアマネジメント
  • 地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な施策
  • 医療・介護領域の連携
  • 看取りの対応強化
  • 感染症・災害への対応力アップ
  • 高齢者虐待防止
  • 認知症の対応力アップ
  • 福祉用具の貸与・特定福祉用具販売の見直し

また、年々クローズアップされている異常気象・災害への対応も重要視されています。その点、2024年の介護報酬改定は“大きな時代の変化”に対応する分岐点と言えるでしょう。

自立支援・重度化防止に向けた対応

『科学的介護推進体制加算』の見直しがより重要視されると予見され、『LIFE』を活用した利用者の状態把握や適切なケアの見極めが求められています。

<主なポイント>

  • リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組
  • 自立支援・重度化防止に係る取組の推進
  • LIFEを活用した質の高い介護

自立支援に重要なLIFEを評価する管理職やケアマネジャーにとどまらず、現場の介護職もLIFEについての理解が必要です。

良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

特に『介護職員の処遇改善』にて、これまで複雑だった処遇改善加算を一本化し、利用しやすい制度にする目的があります。

<主なポイント>

  • 介護職員の処遇改善
  • 生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
  • 効率的なサービス提供の推進

また、介護職の具体的な賃金アップとして『令和6年度に2.5%』『令和7年度に2.0%』のベースアップを目的とした加算率の引き上げが明記されています。

参照:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について-3.(1)① 介護職員の処遇改善①」

制度の安定性・持続可能性の確保

大きなポイントは、評価の適性化・重点化における「同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬の見直し」です。

<主なポイント>

  • 評価の適正化・重点化
  • 報酬の整理・簡素化

減算率の引き上げにより、同じ建物のサ高住とデイサービスを利用させるといった“利用者の囲い込み”を抑制する狙いがみられます。

また、必要性の再検討から以下の加算が廃止となりました。

  • 認知症情報提供加算
  • 地域連携診療計画情報提供加算
  • 長期療養生活移行加算

廃止により確保された財源が、介護職員に還元されることが期待されます。

その他

2024年度の介護報酬改定では、事業所の効率的な運営を目的とした取り組みも実施されました。

<主なポイント>

  • 「書面掲示」規制の見直し
  • 通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化
  • 基準費用額(居住費)の見直し

介護サービスの安定提供には、運営環境の定期的な見直しが大切です。

夜勤職員配置加算の概要

2024年度の介護報酬改定による夜勤職員配置加算の概要について、下記3項目からわかりやすく解説します。

  • 対象の事業所
  • 算定の要件
  • 算定可能な単位数

夜勤職員配置加算への理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。

参照:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について(p35)」
参照:厚生労働省「夜勤職員配置加算の要件の見直し」
参照:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

対象の事業所

夜勤職員配置加算の対象となる事業所は、下記5種の施設です。

  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護

対象事業所の共通点は、夜勤業務を要する“生活型施設”です。施設により対象となる要介護度が異なるため、入居条件を把握しておきましょう。

施設 特徴
介護老人福祉施設
  • 主に「特別養護老人ホーム」と呼ばれる
  • 原則、要介護3以上の方が入居可
介護老人保健施設
  • 在宅復帰を目的とした施設
  • 要介護1以上から利用可
地域密着型介護老人福祉施設
  • 定員29名以下の特別養護老人ホーム
  • 原則、施設と同じ市区町村に住民票がある方が対象
短期入所生活介護
  • 特別養護老人ホームにおける短期間の介護サービスを利用可
  • 要支援の方も利用可
短期入所療養介護
  • 介護老人保健施設や病院等を利用した方が、介護や医療サービスを短期間利用可
  • 原則要介護1以上の方が対象

算定要件

夜勤職員配置加算の算定要件は、下記3パターンに分類できます(介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所生活介護の場合)。

  • 夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等(0.9人配置要件の場合)
  • 夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等(0.6人配置要件の場合)
  • 夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ)の算定要件等

各算定の要件を簡易的にまとめました。

加算の種類 算定要件
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等
(0.9人配置要件の場合)
◆右記(1)(2)どちらかの要件を満たす必要があります。
(1)夜勤職員の規定配置数に加えて1人以上(※)の介護職員、看護職員を配置
(2)見守りセンサーを利用者の10%以上に設置、センサーの安全有効活用を目的とした委員会を設置と検討会を実施している場合は、人員配置基準に対して+0.9人以上を配置
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等
(0.6人配置要件の場合)
◆右記(1)または(2)(3)(4)の要件を満たす必要があります。
(1)夜勤職員の規定配置数に加えて1人以上(※)の介護職員、看護職員を配置
(2)見守りセンサーを利用者全員(100%)に設置、センサーの安全有効活用を目的とした委員会を設置し検討会を実施している場合は、施設形態別に以下の基準以上の人員配置が必要
・ユニット型:人員配置基準+0.6人
・従来型:人員配置基準緩和を適用する場合は0.8人
・人員配置基準緩和を適用しない場合は0.6人
(3)夜勤職員が全員インカム等のICT機器を使っている
(4)安全体制を確保している
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ)の算定要件等 看護職員または介護福祉士等の職員を1人以上配置
「0.9人」や「0.6人」は常勤職員を「1」とした場合の数え方で、パートや派遣などの非常勤を表す数字です。そのため、常勤職員を配置せずとも要件を満たせる場合があります。

介護分野へのICT導入が進む中で、見守りセンサーの設置が算定要件に含まれるようになりました。

算定可能な単位数

夜勤職員配置加算の算定可能な単位数を、施設形態ごとにまとめました。

▼介護老人福祉施設(従来型個室または多床室の場合)

加算名 定員 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 30人以上50人以下 22
51人以上 13
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 30人以上50人以下 28
51人以上 16

▼介護老人福祉施設(ユニット型の場合)

加算名 定員 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 30人以上50人以下 27
51人以上 18
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 30人以上50人以下 33
51人以上 21

▼地域密着型介護老人福祉施設の場合(従来型の場合)

加算名 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 41
13
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 56
61

▼地域密着型介護老人福祉施設の場合(ユニット型の場合)

加算名 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 46
18
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 16
21

▼短期入所生活介護の場合(従来型の場合)

加算名 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 22
13
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 28
16

▼短期入所生活介護の場合(ユニット型の場合)

加算名 単位数/1日
夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ) 27
18
夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ) 33
21

なお『介護老人保健施設』と『短期入所療養介護』の単位数は、“1日あたり24”と統一されています。

夜間の人員配置基準の緩和について

介護老人福祉施設のうち“従来型”の場合は、利用者数に対して必要職員数が緩和されています。

利用者数 夜間の必要職員数(緩和前) 夜間の必要職員数(緩和後)
25人以下 1人以上 1人以上
26〜60人 2人以上 1.6人以上
61〜80人 3人以上 2.4人以上
81〜100人 4人以上 3.2人以上
101人以上 4に、利用者の数が100を超えて25またはその端数を増やすごとに0.8を加えた数以上 3.2に、利用者の数が100を超えて25またはその端数を増やすごとに0.8を加えた数以上

上記の緩和条件を前提に、以下4点の必須条件があります。

  • 見守り機器(センサーや介護ロボットなど)をすべての居室に配置
  • インカムのような通信機器をすべての職員が使用し、利用者の状態を把握
  • 安全体制や介護サービスの質の確保、職員の負担軽減などを実施
  • 専用の委員会を設置し取り組みを検討中

ここからは『見守り機器等を安全かつ有効に活用するための委員会』で確認する5つの事項について解説します。

  1. 利用者の安全及びケアの質の確保
  2. 夜勤を行う職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮
  3. 夜勤勤務時間帯における緊急時の体制整備
  4. 見守り機器等の定期的な点検
  5. 見守り機器等を安全かつ有効に活用するための職員研修

1.利用者の安全及びケアの質の確保

  • 夜間の定時巡回を利用者それぞれの状態に応じて実施
  • 見守り機器等から得られる睡眠状態やバイタルサイン情報の共有
  • 多職種が連携し、見守り機器等の導入後に利用者の状態を確認
  • 見守り機器等の使用が原因で発生した介護事故やヒヤリ・ハットを把握
  • 事故原因を分析した上で再発防止策を検討

ICTの導入により利用者の様子を詳細に把握できる一方で、情報共有の重要性がより高まるでしょう。

2.夜勤を行う職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮

  • ストレスや体調不安など職員の負担について定期的に確認
  • 夜勤時間や業務内容について職員の負担が増えすぎていないかチェック
  • 管理者が休憩時間や時間外勤務などの状況を把握

夜間帯は勤務状況を把握しづらい状況のため、人員配置基準が緩和されれば職員の負担が増えることが予想されます。

管理者は勤務状況を把握し、これまで以上に職員の負担軽減に努める必要があるでしょう。

3.夜勤勤務時間帯における緊急時の体制整備

  • 緊急参集要員の設定や緊急時の連絡体制を整備
  • 緊急整備のために必要な情報を就業規則やマニュアルに記載

緊急参集要員の設定では『緊急時およそ30分以内』に事業所への到着を想定します。

とくに、職員1名でフロアを対応する“ワンオペ夜勤”の場合は緊急時の連絡体制を整え、安心して勤務できる環境を作れます。

4.見守り機器等の定期的な点検

  • 見守り機器等の不具合チェックを日々の業務にて実施
  • 使用する見守り機器等のメーカーと連携した定期点検を実施

センサーや介護ロボットなどの見守り機器は精密で、故障のリスクがあります。少しでもリスクを減らすために、定期的な点検が欠かせません。

機器メーカーとの連携体制を整えることで、事前に不具合を発見する可能性が高まります。

5.見守り機器等を安全かつ有効に活用するための職員研修

  • 見守り機器等の導入目的を職員全体で共有
  • 研修を通じて見守り機器等の具体的な活用方法を学習
  • 見守り機器等を導入した後に実際にどのような効果があったかを検証
  • 見守り機器等を導入したことで感じたデメリットも表面化し改善

介護ロボットなどの機器は便利ですが、施設内の状況次第で不要に感じられるケースがあります。

定期的に職員研修を実施しながら、実際に使用する職員の意見を共有して使用方法を改善するなど、運用方法を検討することが大切です。

夜間の人員配置基準緩和に効果的な対策

  • 業務内容の見直し
  • 勤務時間の調整
  • ICT機器の導入

まずは、夜間の業務改善の見直しが必要です。夜勤時に取り立てて必要のない業務は日勤で対応するなど業務の見直しが欠かせません。

勤務時間の見直しも人員配置基準緩和に効果的です。例えば“16時間”という長時間の夜勤を廃止し、勤務時間を短縮することで職員の負担を減らす方法があります。

もう一点は、今回の人員配置基準緩和の要件である『ICT機器の導入』です。インカムやセンサーに次ぎ、業務負担軽減につながるICT機器が大切です。たとえば『Neos+Care(ネオスケア)』のような次世代予測型の見守りシステムは、さまざまな機能の正確性を高めたICT機器です。

実例として導入後に転倒事故が48%減少、介護業務を30%削減できたという調査結果が発表されています。

テクノロジーの進化とともに開発されたハイレベルな機器の導入により、人員配置基準の緩和に対応できるでしょう。

▼次世代予測型見守りシステム『Neos+Care(ネオスケア)』
https://www.mdsol.co.jp/melfare/service/neoscare.html

夜間の人員配置基準緩和による介護現場への影響

さまざまなICT機器の導入は非常に前向きな取り組みです。一方で、夜間の人員配置基準緩和は正しい選択と言えるのでしょうか。

実際に夜勤を担う現役介護職として、夜間の人員配置基準緩和は「人員減少による心身の負担増加」「新たな機器の使い方を覚える必要性」「現場任せのマネジメント」といったリスクも想定します。

人員配置基準の緩和そのものは、人手不足に悩む介護業界を救う一手にはなりません。その分、介護領域の人材難における本質的な課題解決には、機器の有効活用にとどまらず、日勤の人員配置の充実や職員の待遇改善などの施策も合わせて実施することが大切です。

まとめ

介護業界では夜間の人員配置基準が緩和され、現在ICT機器の必要性が高まっています。ただし、有効活用できる環境を整えられなければ、職員負担が増えるだけで逆にデメリットになるリスクもあります。

夜間の人員配置基準緩和や夜勤職員配置加算など制度の詳細を理解し、現場にとって最も必要なニーズを把握し実践する姿勢が欠かせません。

高精度な見守りシステムで介護職員の負担を軽減「ネオスケア」

著者プロフィール

津島 武志
介護系WEBライター

介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、介護系のWebメディアにおいてのライター活動をはじめ、介護士さんを応援するメディア「介護士の転職コンパス」や「介護士の副業アンテナ」などの運営にも取り組んでいます。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士。

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