介護と育児を並行する「ダブルケア」、企業ができる支援とは

育児と介護を同時に行う「ダブルケア」は、30代・40代の「働き盛り」の人々の多くが抱えている問題です。子供と親の両方のケアを同時に行う負担の大きさから、やむを得ず離職に至る人もいます。そのため、ダブルケアについて悩んでいる従業員に対し、企業が適切な支援を行うことが、離職率低下につながるとも言えるのです。
このコラムでは、人事・総務担当者、及び経営層の方に向け、ダブルケアの実態や企業が行える具体的な支援についてご紹介します。従業員がダブルケアを理由に離職しないための取組に、お役立てください。

ダブルケアとは

「ダブルケア」とは、育児と介護を同時に行っている状態を意味します。夫婦が子供を持つ年齢が上がってきていることや、高齢化社会が進んでいること、そして少子化で助け合える兄弟姉妹がいないことなどからダブルケアが増加していると考えられており、深刻な問題になりつつあります。

ダブルケアがもたらす問題の筆頭として挙げられるのが、「仕事を辞めざるをえない状況に追い込まれる」という点です。育児に加え親の介護までしなければならないとなると、時間的な余裕がなくなるだけでなく、体力的な負担も増します。その結果、仕事との両立が難しくなってしまうことは、想像に難くありません。これに、思うように働けないストレスや、親を介護することで自分の子供に構えないストレスなどが重なり、精神的ストレスで疲弊してしまうダブルケアラーは少なくありません。肉体的・精神的不安が自分では抱えきれなくなったとき、最終的に「離職」を選ぶケースもあるのです。
こうした「ダブルケアによる離職」の多くは、30代から40代のいわゆる「働き盛り」の人々にふりかかる問題でもあります。こうした人々の離職は、企業の競争力低下も招いてしまうため、企業にとってはダブルケアラーが働きやすい職場づくりが急務と言えるでしょう。

ダブルケアの実態について

内閣府男女共同参画局が公表した「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(平成28年4月)」によると、ダブルケアを行っている人が約25万人もいることが分かっています。
また、大手生命保険会社が2018年に行ったダブルケアに関する調査によると、全回答者(17,049名)中

  • ダブルケアに直面している人:16.3%
  • ダブルケアを経験したことがある人:29.1%

という結果でした。
「数年先にダブルケアに直面する人」の7.5%を加えた「ダブルケアが自分事である人」は全体の3割を超えていることから、ダブルケア問題が私達の生活において決して「他人事」ではないことが分かるでしょう。
性年代別にみると、ダブルケアを経験している人の割合は男女ともに年齢が上がるにつれ高くなる傾向にあります。今回の調査では、50代男性の33.1%、50代女性の41.1%がダブルケア経験者であることも分かりました。
なお、こうしたダブルケア経験者の中で目立つのは、半分近い人が「精神的つらさ」を負担と感じている点です。こうした精神的なつらさを感じる割合は年代が上がるほど増える傾向にあり、30代では39.5%だったものが、50代になると54.8%まで増加していました。一方、年代が若くなると「子供と向き合う時間がない」と返答する割合が高くなっています。さらに、ダブルケアをしながら仕事をしている人(765名)の中では、仕事との両立を負担に感じる人が男性の場合は15.4%、女性の場合は28.7%という結果となり、女性の場合は男性の約2倍、仕事との両立に負担を抱えていることが分かっています。

ダブルケアにはこうした肉体的・精神的負担のほかに経済的な問題が発生することも忘れてはなりません。実際、ダブルケアに関わっている・いた回答者(1,000名)中、経済的負担感がある・あった人の割合は6割にも上っています。介護費用に月十数万円が発生し、これに家のローン、子供の養育費などが加わると、共働きであっても経済的負担がかなり大きいことが伺えます。
ダブルケア問題に向き合うためには、精神的・肉体的な問題に加え経済的負担にどう対処していくかが大きな課題と言えるでしょう。

ダブルケアラーに対する支援

ダブルケアによる精神的・肉体的な負担を解消するため、同じ立場同士で辛さを分かち合ったり、近親者に相談したりする人も多いようです。しかし、負担の根本的な解決のためには、「家の外」つまり、企業や行政・自治体におけるケアが不可欠と言えます。以下では、企業としてダブルケアラーのために整えておきたい制度や、アドバイスする際に知っておきたい相談先についてご紹介します。

ダブルケアラーのために整えるべき制度

仕事と介護あるいは育児を両立している方に向けた支援対策として設けられているのが、「育児・介護休業法」です。「育児・介護を行う人が無理なく仕事を続けること」を目的としており、例えば、

  • 3歳未満の子供を持つ労働者に対しては、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならない
  • 小学校就業前の子供を養育している、または要介護状態にある対象家族を介護している場合、事業主は労働者に対し、1ヶ月につき24時間、1年で150時間を超える残業をさせてはならない
  • 要介護状態にある対象家族を介護している場合、対象家族一人あたり3回を上限に通算93日間の介護休業を取得できる
  • 事業主として「所定労働時間の短縮措置」「フレックスタイム制度」「始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ」「介護サービス費用の助成」のいずれかの措置を講じ、連続する3年間以上の期間で2回以上利用できるようにしなければならない

などがあります。ご紹介した以外にも様々な制度や措置が定められていますので、詳しくは厚生労働省が作成した「育児・介護休業制度ガイドブック」をご確認いただき、就業規則に規定しましょう。

このような国の制度とともに、企業として独自に制度を設けているところも多く見られます。例えば、以下のような制度があります。

  • 育児短時間勤務制度の子供の年齢上限を上げ、小学校就業前とする
  • 看護を目的としたものだけでなく、育児理由の特別有給休暇制度を設立する
  • 介護休業について、通算365日を限度に最大3回まで分割して取得できるようにする
  • 介護に伴う転居や環境整備等の費用を支援金として支給する制度を設ける

企業としてダブルケアで悩む従業員に対し、どのような取組を行うかが離職防止にも繋がります。また、従業員が制度を利用しやすい社内環境を整えることも大切な支援の1つであるため、理解促進に努めましょう。

ダブルケアラーのための相談先

ダブルケアラーの中には、育児や介護について「誰にも相談できない」と悩んでいる人が数多くいます。誰にも相談できないという悩みは、新たな精神的ストレスに結びついてしまう可能性もあります。悪循環に陥らないためにも相談先について知っておき、従業員から相談等を受けた場合すぐに答えられるようにしておくことは非常に重要です。
行政が提供している代表的な相談窓口としては、「地域包括支援センター」が挙げられます。高齢者が健康で安心な暮らしができるよう、高齢者の相談窓口としての役割を持つ一方で、子育てや家族のことについても相談することが可能です。
また、雇用保険による育児・介護休業についてはハローワークなどで相談できます。育児・介護休業など休業制度全般に関することであれば、都道府県労働局で詳しい話を聞けるので、相談を促してみてもいいでしょう。

なお、ダブルケアによる負担を減らすため、独自の取り組みを行っている自治体もあります。例えば神奈川県横浜市では、保育所や要介護認定者の数を増やしました。さらに民間と提携し「ダブルケアサポート横浜」というNPOを立ち上げることで、ダブルケアへのサポート充実を目指しています。

また、大阪府堺市では、2016年から市内7つの市役所にダブルケア相談窓口を設置し、育児・介護両方の研修を受けた保健師や社会福祉士が相談に乗っています。さらに、2017年にダブルケアの場合は優先的に特別養護老人ホームに入所できる制度もスタートさせ、地域一体となってダブルケアの負担を減らす取組を行っています。

育児・介護休業中の経済支援

経済的な問題はダブルケアラーの多くが抱えている不安ですが、育児・介護休業中の人が受けることのできる経済支援が様々あります。しかし、そのような支援があることを知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば育児休業中の場合、1歳未満の子供を養育する期間中(子供が1歳を迎えても休業が必要と認められた場合は、子供が2歳になるまで)に育児休業給付が支給されます。育児休業開始から6ヶ月までは賃金の67%を、それ以降は50%を受け取ることが可能です。また介護休業中の場合は、家族の介護を行う期間中、賃金の67%に相当する介護休業給付を受け取れます。
雇用保険料に関しても、育児・休業中に勤務先から給与が支給されない場合は負担が免除されます。さらに、育児休業を取得する場合は、健康保険、厚生年金保険といった社会保険料も免除されるのです。
このような支援の手続きは、基本的に勤務先の企業が行うものです。経済的な相談事は、なかなか言い出しにくい面もあります。そのため、休業を検討している従業員から相談があった際には、企業側から経済支援の話を持ちかけるようにしましょう。ダブルケアラーの立場にたった「心配り」が、大切ではないでしょうか。

まとめ

働き盛りの30代・40代にのしかかる「ダブルケア」の問題。ダブルケアそのものに負担を感じるだけでなく、仕事との両立に限界を感じ離職に至ってしまうケースも少なくありません。高齢化が進む社会では、こうしたダブルケア問題はより深刻化してくると言えるでしょう。企業にとっても、優秀な人材がダブルケアを理由に離職すると、大きな損失になります。
そうした事態を防ぐためにも、人事・総務担当者としてダブルケアの大変さを知っておきましょう。また、困っている従業員に対しどのようなサポートができるか、どんな支援体制を企業として築くことができるか、見直してみるきっかけとなれば幸いです。

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